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なぜあの会社が選ばれるのか。『がっちりマンデー!!』プロデューサーに学ぶ情報発信|TBSテレビ

テレビ番組から取材されるためには何が必要なのか。メディアに注目される情報提供とはどのようなものか──。広報PR担当者にとっては常に関心の深いテーマです。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESでは、2025年4月25日に「人気番組の裏側に迫る!日々の情報収集から取材先の決め手とは?」をテーマに、ユーザー会を実施。TBSテレビ「がっちりマンデー!!」の総合演出・プロデューサーを務める大松雅和さんに登壇いただきました。

「がっちりマンデー!!」は、2004年から20年以上続く人気経済バラエティー番組です。日曜日の朝7時半から、「儲かっている人に学ぼう」をコンセプトに世の中の「儲かっている企業」を密着取材。視聴者に長く愛され続けています。

番組ではどのように取材先を選び、プレスリリースはどう活用しているのか。当日、大松さんにお話しいただいた内容をまとめています。

株式会社 TBSテレビ コンテンツ制作局 バラエティ制作三部 部長代理 『がっちりマンデー‼』総合演出・プロデューサー

大松雅和(Oomatsu Masakazu)

1996年TBS入社。情報システム部門に配属後、1998年から制作部門へ。「ウンナンのホントコ!」「ガチンコ!」「関口宏の東京フレンドパーク2」などのディレクターを担当。「がっちりマンデー!!」2004年4月の放送開始時から、総合演出を担当、現在はプロデューサーを兼務。他に「坂上&指原のつぶれない店」プロデューサーも担当。

視聴者の驚きと納得で長寿番組に

「がっちりマンデー!!」が始まった2004年は、「儲かる」ことを強調するのがあまり一般的ではない時代でした。お金儲けに対してネガティブな風潮があったんですよね。でも、「儲かるっていいことだし、楽しいことだよね」と、経済をバラエティー目線で楽しく伝える番組づくりをしてきました。

番組開始当初は、「投資」や「金融」といったテーマも扱っていたのですが、儲かっている企業の秘密を探るコーナーの視聴率が特に高かったため、現在のコンセプトが確立。普段あまり見聞きしない「儲かっている企業」が次々と取り上げられることで、視聴者の方々が「自分も明日から頑張ろう」と、前向きになれることが番組の魅力だと思っています。

番組で取り上げるテーマは、「儲かる元素」「おにぎりウォーズ」「儲かる園芸」といったニッチな分野が多いですね。真っ向から経済を取り上げても、経済報道番組と差別化ができないので、独自のアングルや切り口で考えたテーマを大切にしています。流行の「裏側」を行くビジネスに惹かれますね。

ニッチな分野を取り上げる際に大切にしているのは、「一般の方へのわかりやすさ」です。

専門性が高く難しい内容を、視聴者の方にどうわかりやすく伝えるかを、VTRの構成やテロップの入れ方、ナレーションの原稿で、とても意識しています。「難しい内容だから説明しない」ことはありません。ただこれを、簡単な言葉だけで説明しようとすると長くて退屈になるので、「ちょうどいい難しさ」もポイントです。

どれだけ専門的なビジネスでも、2〜3ステップを辿ればどこかで日常生活につながっています。例えば、「アルミ」を扱っている企業を取り上げるとしたら、まず冒頭で日常生活とのつながりを示し、次に「アルミってそうやってつくるんだ」と、視聴者が知らないであろう話を入れて「驚き」を提供します。そして、「なぜそれができるのだろう」という疑問に答えて「納得」してもらう。「驚き」と「納得」の組み合わせが、視聴者の方の「へえ、そうだったんだ」という、満足感につながるんだと思っています。

TBSテレビ01

メディアに注目されるための情報提供とは

1.タイトルに具体的な「数字」を入れる

新商品や新サービスのプレスリリースをいただくことが多いのですが、「がっちりマンデー!!」では、発売前か直後など、売れているかどうかのデータがないものは取り上げられません。一方、売れている事実を示す「数字」があると取り上げやすくなります。例えば以下のプレスリリースは、売れている事実がダイレクトにわかるので非常にいいですね。特に「円」がつく数字はメディアの目を惹きやすいと思います。

プレスリリース事例01

参考:発売3ヶ月で累計販売数25,000本を突破 990円のサロン専売ヘアケアが好調

また以下のプレスリリースのように、同じブランドやシリーズの累計実績を掲載するのもひとつの手だと思います。売れるかどうか不明確でも、「過去の実績から、けっこう売れそうだな」と思える数字が書かれていることで、「詳しく見てみよう」という気持ちになります。

プレスリリース事例02

参考:累計4.8万枚突破!人気の暑さ対策アイテム「ザムスト COOL SHADER」今年は新製品・フード付き冷感ベスト「アクティブベスト」をラインアップ

とはいえ、コンサルティング業のように、自社の売り上げを直接公開することが難しいケースもあるでしょう。そうした場合では、クライアントの許可取りは必要ですが、クライアント企業を主体にした「〇ヵ月で〇〇円の赤字経営から復活した」といった形にするという方法もありますね。

2.キーワード設定、絵になる要素の追加

「白いシャツ」が商材なら、タグ・キーワードを「白」「シャツ」「日用品」などの複数のキーワードを設定しておくと、検索したときにヒットしやすいのでおすすめです。

またテレビは、映像化したときに「絵になる要素」も必要です。「がっちりマンデー!!」であれば、「スゴイ社長」や「スゴイ職人」のように、キャラクター性のある人物にフォーカスしたストーリーが映像化しやすい。苦労話や開発秘話もあるといいですし、「2日に1回ものすごい火柱が上がる工場」のような、視覚的にインパクトのある情報も気になります。

あと、以前あるテーマパークの取材で、年に一度のイベント映像が必要だったとき、広報の方が「大丈夫です、全部ありますから」と即座に素材を用意してくれたんです。自分たちでカメラを回せない映像を、素材としていただけるのも本当に助かります。

3.メディアのコンセプトに合った情報を提供する

「そのメディアは視聴者に何を届けようとしているのか」を考えることが、情報提供の秘訣ではないでしょうか。

例えば「がっちりマンデー!!」のコンセプトは「儲かってる人に学ぼう」です。コンセプトに合わせて「儲かってる情報」を提供いただくのが、番組取材に最もつながりやすいです。

また、「報道関係者各位」と書かれた一斉送信の情報は見慣れていますが、明らかに自分たちの番組のために書かれた情報が届くと、やはりうれしいものです。これは稀な例ですが、「がっちりマンデー!!」に合わせた企画(テーマ案)と、自社も含めた取材先企業の候補まで送ってくださった広報PR担当者の方がいました。このときは、本当に面白そうと実際に取り上げたのですが、面白い企画を考えるのは、私たちも日々苦労しているほど大変なことです。企画が面白くないとそもそも読まれずに終わってしまいますし、メディアが企画を立てやすいように、タグ・キーワードをちりばめておくだけでも効果的だと思います。

そして、意外と皆さんやられていないのが、自社のWebサイトに情報を載せておくことです。「がっちりマンデー!!」のリサーチャーも企業サイトを必ずチェックしますが、情報が十分に載っていないことが多いんです。あらかじめ情報を載せておけば、メディアから見つけてもらえる可能性が広がりますので、できていない企業は検討してみるとよいかもしれません。

TBSテレビ02

【一問一答】広報PR担当者からの質問に大松さんが回答

ここからは、大松さんへ寄せられた質問への回答をご紹介します。当日は時間の関係で回答いただけなかった質問に対し、追加でお答えいただきました。

──日曜朝という、さわやかな時間帯に放送される番組の特性上、取り上げるテーマにおいて意識されていることや、避けているジャンルはありますか。

特に、日曜朝だからといって避けるテーマはありません。

──以前番組で取り上げていただいたことがあるのですが、将来的に再度取り上げていただけるよう、あらためて準備していきたいと考えています。同じ企業を再び取り上げるというケースは、番組としては珍しいことなのでしょうか。

いえ、同じ企業さんを2回以上取り上げることはよくあります。同じ商材やビジネスでなければ、大丈夫です。

──リサーチからロケまでの期間が想像よりも短い印象を受けました。どこにスポットを当てるかは、「視聴者や企業が興味を持ちそう」「他社と比べて際立っている」など、どのような視点で決めていらっしゃるか基準があれば教えてください。

本文中にもありますが、情報に「驚き」と「納得」があるか、が一番のポイントです。そのためには、他社にない「独自性」があることもひとつの要素になります。

──ロケ前に想定していた見せ場と、実際の取材を経て変更するケースもあるかと思いますが、どのくらいの頻度で修正や再構成が行われるのでしょうか。

一概には言えませんが、3回に1回くらいでしょうか……。事前の打合せで聞いていたものがロケ現場で違うものだった、といった場合にそういうことになることが多いです。

──ニッチな市場をターゲットにされているとのことですが、企画を立てる際に「この層に届けばこれくらいの反響が得られるはず」といった視聴者像や反響の見込みをある程度描いて進めていらっしゃるのでしょうか。もしくは、数字を細かく想定するというよりは、「この題材は面白く、きっと視聴者の関心を引くだろう」という確信をもとに企画されるケースが多いのでしょうか。

後者です。あまり、定量的な予測をたてることはないです。ただ、「SNSでこういう反応あるかな?」といった定性的な視聴者の反応をイメージしたりはしていて、それに基づいて構成したりはします。

──取材まで行ったにもかかわらず、放送に至らなかった企画には、どのような期待と現実のギャップがあったと感じられますか。またそうした場合、どのような点を懸念されての判断なのでしょうか。

実際に撮れるはずだったものが撮れなかった、もしくは公開できるはずの情報が(取材先の都合で)公開できなくなった、というときぐらいです。

──ディレクターの方へ情報を届ける際、どのような手段(郵送、FAX、メール、電話、アポイントなど)がもっとも受け取りやすく、好まれる傾向にありますか。また、番組のネタを検討する会議は、何曜日の午前・午後に開かれることが多いのでしょうか。新鮮な情報をタイミングよく届けるために、差し支えない範囲で教えていただけますと幸いです。

メールがいいと思います。時間帯は特に問わないです。

──曜日によって、プレスリリースなどの情報がより目に留まりやすい傾向はありますか。例えば「この曜日は忙しくて見られにくい」「この曜日は比較的じっくり見てもらえる」といった傾向があれば、ぜひ教えてください。また、メールの件名で「数字」が大切と伺いしましたが、ある程度の判断を件名のみでされることは多いのでしょうか。

曜日は関係ないですね。メールは、いちおう中身までみますが、タイトルにきちんと要旨が入ってるのがベストだとは思います。

──ニッチな業界の広報PRを担当していますが、「誰にでもわかる言葉で伝える」ことが難しいと感じています。専門的な内容を一歩引いた視点でわかりやすく伝えるために、日頃から意識できることや、参考になる企業の表現・言い換えの事例などがあれば教えていただけますか。

「その業界のことを知らない友人や家族に説明するとしたらどうやってやるだろう」ということをイメージする、でしょうか。「誰にでもわかる言葉」よりも、「具体的な特定の誰かにわかる言葉」を意識したほうが考えやすいと思います。

──「売り上げがある=すでに一定の認知や話題性を得ている」となると、「新鮮さ」という意味では少し落ち着いた印象になるのかなと思います。テレビでのご紹介は、Webや新聞などほかのチャネルでのある程度の露出を経たタイミングがちょうどよい、という見方もあるかと思うのですが、どのようにお考えでしょうか。

「売り上げがある=すでに一定の認知や話題性を得ている」とは必ずしも言えないと思います。逆に、売れているのにそのことが知られていないものを取り上げたり、売れている理由がなかなかわからない(けど、面白い)ものを取り上げることが多いです。

まとめ:メディアの心をつかむ情報提供のポイント

本イベントでは「がっちりマンデー!!」が取材先を選定する流れから、取り上げられるための秘訣など、メディアの視点でお話しいただきました。20年以上愛される人気番組のプロデューサーからの実態に沿った内容は、広報PR担当者の方々にとって大変貴重だったのではないでしょうか。

「がっちりマンデー!!」のプロデューサー・大松雅和さんから学ぶ、メディアの心をつかむ情報提供のポイントは以下です。

  • メディアのコンセプトに合わせた情報を提供する
  • プレスリリースは、数字、検索されやすいタグ・キーワード、絵になる要素を入れる
  • 自社のWebサイトに情報掲載する

すべてのメディア向けに情報を個別最適化するのは難しいかもしれませんが、自社の強みを、どのメディアにも活かせる「基本的な要素」と、特定のメディア向けの「カスタマイズ要素」に分けておくと効率的です。

広報PR担当者の方々はリソースを考慮しながら、今回のポイントを参考にしてみてください。

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この記事のライター

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